概要 研究活動 教育活動 教育方針 臨床活動および学外活動 臨床上の特色

スタッフ

職名 氏名(カナ) 研究者情報
教授 森 雅亮(モリ マサアキ)
助教 山本 晃央(ヤマモト アキオウ)
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概要

急速な社会的関心の高まりを受け、移行期医療整備を含む生涯を視野に入れた医療の重要性が指摘され、かつ、平成27年から厚生労働難病政策の充実が図られている。一方で、既存大学講座は内科と小児科の枠組みから脱することができない。ことに免疫難病においては、限られた大学病院を中心に小児リウマチ学が発展してきたが、内科との融合どころか、その安定的継承が課題となっている。また、原発生免疫不全症患児が成人後の診療の担い手が不足しており、原発性免疫不全症に合併する自己免疫疾患への対応には、小児科と膠原病科の協力が欠かせない。
今まさに時代が求めるものは、我が国の小児リウマチ学を継承し、小児から成人まで膠原病・リウマチ性疾患などの免疫難病をシームレスに研究・教育する体制を確立することである。この時代の要請に応えるために、平成28年4月に本学大学院医歯学総合研究科に生涯免疫難病学講座(以下、本講座)が寄附講座として開講された。膠原病・リウマチ内科および小児科の協力を得て、「難病に小児科/内科の枠組みなし」の思想の下、既存講座では達成しえないような免疫難病の研究・教育体制の構築を進め、ひいては難病全般の診療と学問の刷新と充実の先駆けとなる新講座となったと確信している。その甲斐もあって、本講座で取り組んでいる「移行期医療」研究は、広く社会に受け入れられるようになり、国の政策の一つとしてとして取り上げるようになってきた。本講座を更新することで、社会の要請に呼応する必要性および義務がある。本講座では、これまでの成果を実臨床に活かしつつ、PIDに合併した自己免疫疾患の診療および小児期に診断されたPID患者に対する移行期医療に対するニーズにも応えてゆく責務を果たすべく更なる追求と飛躍を目指して、講座の更新を図ることを画策している。
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研究活動

1)膠原病・リウマチ内科および小児科の連携による研究・教育体制の確立
本講座では、概して小児と成人のリウマチ・膠原病疾患の相同性あるいは相違性を明確に認識し、「ライフコース(生涯)を通じた難病対策」のための全人的アプローチ法を開発し具現化を図る。リウマチ性疾患では様々な治療戦略が提唱されてきたが、患者背景、とくに年齢を考慮したきめ細かい戦略は提唱されていないのが現状である。小児から成人への移行期には、小児科から内科への担当科/主治医変更、薬物代謝や体格の変化による必要薬物量の変化など、過渡期特有の問題が多々生じうる。また、メトトレキサートをはじめ種々の治療制限をうける挙児希望者や、合併症やコンプライアンスが懸念される高齢者など、それぞれのニーズと問題点に配慮した治療戦略の提唱を引き続き行っていく。

2)小児リウマチ・膠原病疾患に対するデータベースの構築と解析および成人例との比較検討
本講座が中心となり、これまで本邦では整備されていない小児リウマチ・膠原病疾患における全国的なデータベース構築の完成を目指す。
とくに、若年性特発性関節炎(以下、JIA)においては、日本小児リウマチ学会の協力の下、500例規模の登録を目指すとともに、継続的な観察により長期経過を把握することを目的として、既存の成人関節リウマチ(以下、RA)データベース:NinJa (National Database of Rheumatic Disease by iR-net in Japan)と連動したデザインとする。JIAにおける現状の把握と問題点の抽出を行うと共に、JIAとRAで共通して使用可能な評価指標を確立し、既存のRA疾患活動性指標のJIAでの妥当性を検討する。関節型JIA症例では、小児期に激しい活動性を示した患者を含め、約30%はdrug-freeとなるため、このような症例の解析をおこなうことで成人例でのdrug-freeの可能性を検討する。成人発症Still病は、全身型JIAが成人期に発症したものと考えられてきたが、相違点も存在する。全身型JIAでは一方遺伝子異常が根底にあると考えられるようになっている。当講座では、コホート調査や体系的遺伝子解析、マイクロビオーム解析などを用いて、JIAの各種病型と、成人発症Still病やRAなどの関連や病態解析を行い、これらの疾患の再定義を行う。
他の膠原病では、多発性筋炎・皮膚筋炎、特に皮膚筋炎では小児および成人期に2つの発症ピークがあり、かつ皮膚石灰化などの症状にも差があり、病態の異同が注目される。我が国のコホート研究は、厚生労働省の「指定難病」や「小児慢性特定疾病」の認定のために小児と成人で独立して調査されてきた。国際的には、Euromyositisが多国間にまたがるデータベースを構築している。本講座では、国際的にデータベースと連携する小児から成人までのデータベースを構築し、我が国の筋炎患者と診療の実態を明らかにする。

3)本邦における小児リウマチ・膠原病患者に関する疫学研究やエビデンスに基づく診断基準・重症度分類の適正評価と策定に向けたデータベース研究
本講座は、とくに小児リウマチ・膠原病疾患に対して、厚生労働科学研究 難治性疾患等政策研究事業(免疫アレルギー疾患等政策研究事業)「移行期JIAを中心としたリウマチ性疾患における患者の層別化に基づいた生物学的製剤等の適正使用に資する研究」班(研究代表者 森 雅亮)、日本小児リウマチ学会との共同研究として、「本邦における小児および成人移行期リウマチ・膠原病患者に関する疫学研究やエビデンスに基づく診断基準・重症度分類の適正評価と策定に向けたデータベース研究」の運営を開始する。上記2)に示したNinJaシステムを活用し、日本小児リウマチ学会疾患登録制度データおよび小児慢性疾病および指定難病データの臨床的活用を図る。
なかでも、小児リウマチ性疾患で最も多いJIAに対する生物学的製剤使用患者に関する疫学研究を優先的に行い、日本における有効性・安全性の評価を継続的に行っていく。若年性皮膚筋炎では、国際炎症性筋疾患分類基準プロジェクト(IMCCP)が提示した炎症性筋疾患の診断基準の検証を、日本人小児皮膚筋炎患者集団を対象に多施設共同調査にて施行し、世界に向けて成果を報告する段階になっている。

4)疾患バイオリソースセンターを活用した全エクソン解析、次世代シークエンス解析、免疫マーカー研究による、小児から成人までにみられる免疫難病疾患全般の病態解明
本講座では、全エクソン解析、次世代シークエンス解析、免疫マーカー研究などの最新技術を有する本学の疾患バイオリソースセンターを活用し、小児から成人までにみられる免疫難病疾患全般(原発性免疫不全症、自己炎症疾患、リウマチ・膠原病疾患、血管炎症候群)の病態解明に挑み、小児期発症例、小児から成人への移行例、成人発症例について網羅的に解析をおこなう。原発性免疫不全症では300以上の責任遺伝子が明らかになっており、全身性エリテマトーデス(以下、SLE)症状や関節炎、血管炎を主体とするような疾患でも遺伝子異常が同定されている。このような知見を生かし、成人におけるリウマチ・膠原病疾患における遺伝的背景及び発現修飾に光を当てた研究を行う。加えて、原発性免疫不全症の新生児マススクリーニングなど先端的早期診断法の開発と導入にも力を注ぎ、成人期におけるリウマチ・膠原病疾患と関連について検討を行う。
研究成果の期待される応用としては、①JIAに対するサイトカイン阻害薬の効果判定、②「遺伝子変異を背景とするクリオピリン関連周期性発熱症候群」に対する抗IL-1βモノクローナル抗体療法の効果判定、③高サイトカイン血症の成因および発症機序に基づく普遍的な早期診断の確立、④成人膠原病症例における免疫不全症遺伝子の関与の解析、⑤免疫不全を背景とした自己免疫疾患に対するIVIgの効果などがあげられる。

5)原発性免疫不全症患者を対象とした移行期医療の実施と合併する自己免疫現象・自己免疫疾患の診療
原発性免疫不全症の多くは小児で発症し、免疫グロブリン製剤の継続的補充療法を要する場合が多いが、このような患児が成人した後の継続した診療の担い手が不足している。さらには、成人後に発見される原発性免疫不全症や、合併する自己免疫現象・自己免疫疾患も稀ではなく、診療科横断的な診療体制が求められている。本施設では積極的に原発性免疫不全患者の移行期医療に取り組んでおり、こうしたアンメットニーズに応えるべく、小児科-膠原病科間のシームレスな診療が行える特質を生かした診療を行ってゆく。
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教育活動

小児から成人まで縦断的に難病を診られるハイブリッドリウマチ医の育成
 これまでの診療体制は、小児と成人で担当が分かれているが、これはあくまで医療者側の都合であった。患者から見れば、同一疾患にもかかわらず、成長してある年齢に達したら担当科、主治医が変わってしまうことに対し、戸惑いと不安、不満を感じるものも少なくない。成人側の担当医も、患者がこれまでどのような経過だったのか、成長期において医学的なこと以外にどのような問題や悩みがあったのか、キャリーオーバー症例に対してRAと同様に接して良いのかなど、対応に苦慮することも多い。そのためにも、当講座が中心となり、小児と成人の両方の治療に精通し、小児と成人の垣根を越えたリウマチ診療のスペシャリストの育成を行い、教育体制を整え、他施設からの研修も引き続き受け入れていく。また、他施設からの相談にも対応できるような相談窓口の設置なども検討していく。

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教育方針

本講座は、膠原病・リウマチ内科および小児科の協力を得て、患者の生涯にわたっての免疫難病の研究・教育・診療体制の統合を推進し、ひいては難病全般の診療と学問の刷新、充実化の先駆けとなる講座をめざすべく動き出している。小児から成人移行期、成人期から高齢者の患者が抱える諸問題の解決を可能とするような小児科、成人科の専門医を育成する。
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臨床活動および学外活動

臨床活動
小児科、膠原病リウマチ内科で連携して小児から高齢者まで、膠原病・リウマチ性疾患の診療を行った。

学外活動

森 雅亮教授が以下における研究代表として活動

# AMED 免疫アレルギー疾患実用化研究事業 関節リウマチ(RA)大規模データベースを用いた、移行期・AYA世代および妊娠期RA患者における疾患特性の異同を内包するライフステージの課題抽出とその解決に資する研究 [研究代表:森雅亮]

#厚生労働科学研究費補助金 (免疫・アレルギー疾患政策研究事業) 移行期JIAを中心としたリウマチ性疾患における患者の層別化に基づいた生物学製剤等の適正使用に資する研究 [研究代表:森雅亮]

森 雅亮教授が以下における研究分担者として活動

#厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究 
#厚生労働省科学研究費補助金 免疫・アレルギー疾患政策研究事業
関節リウマチ診療ガイドラインの改訂による医療水準の向上に関する研究
#厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業
 強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究                         


助教の伊良部仁は以下の研究協力者として活動
# 厚生労働科学研究費補助金  免疫・アレルギー疾患政策研究事業 移行期 JIA を中心としたリウマチ性疾患における患者の層別化に基づいた生物学的製剤等の適正使用に資する研究


助教の佐々木広和は以下の研究代表者として活動
# 文部科学省科学研究費助成事業 若手研究
多発性筋炎の病態におけるPD-L1の機能解析及び治療への応用


以上につき、国内外の学会、研究会で研究成果を報告した。
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臨床上の特色

生涯免疫難病学講座は、「子どもから、成人、高齢者まで一生涯にわたり、膠原病・リウマチ性疾患などの『免疫難病』の研究・教育・診療体制の統合を目指す,世界に類をみない大学講座」である。本学の膠原病・リウマチ内科と小児科がタイアップすることにより、従来の講座のみでは達成できなかった、難病患者が抱える諸問題を解決することに努めている。
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