概要 研究活動 教育活動 教育方針 臨床活動および学外活動
ホームページ https://sites.google.com/view/tmdu-parasitology

スタッフ

職名 氏名(カナ) 研究者情報
教授 石野 智子(イシノ トモコ)
講師 新澤 直明(シンザワ ナオアキ)
講師 長岡 ひかる(ナガオカ ヒカル)
助教 馬場 みなみ(ババ ミナミ)
助教 外川 裕人(ケガワ ユウト)
大学院生 OUNDAVONG SUNTI(ウンダヴォン サンチイ)
大学院生 FREDERICK OFOSU APPIAH(フレドリック オフス アピア)
大学院生 MARK TETTEH-TSIFOANYA(マーク テッテ チフォアナ)
大学院生 PETER BOLAH(ピイター ボラ)
大学院生 QURATUL-AINISSAHAQUE(クラチュライン イサハック)
大学院生 関根 崇(セキネ タカシ)
大学院生 AMANOR IVY BRAGO(アマノール アイヴィー ブラゴー)
大学院生 ERIC COFFIE(エリック コフィー)
大学院生 岡田 玲那(オカダ レイナ)
技術補佐員 村山 比佐子(ムラヤマ ヒサコ)
このページの先頭へ▲

概要

 寄生虫疾患は、今なお世界各地で人々の生活に大きな影響を与え続け、その対策は保健衛生における重要な課題である。世界三大感染症の1つであるマラリアは、世界中で2億人を超える人が感染し、アフリカを中心に年間60万人が亡くなる寄生虫疾患である。特に5歳以下の乳幼児の死亡率が高く2分に1人の子供が亡くなる現状である。住血吸虫症も世界中に2億人を超える感染者がいるものの、「顧みられない熱帯病」として、有効な対策が十分に取られていない。私たちは、このような寄生虫疾患に対し、病原寄生体の感染機構の解明や、宿主との相互作用を解明する事を目標に研究を継続的に実施する。これらの基礎研究は、寄生虫の生物学的な理解を深めることに留めることなく、感染流行地を含め世界の研究者たちと連携し、ワクチンや薬剤の開発へと展開させていく。
 本分野は、衛生動物学の研究を主として開設され、その後寄生虫疾患の中でも蠕虫をテーマに活発な研究を展開してきた歴史がある。2021年に石野が着任し、前任の岩永教授に続き、マラリア原虫をメインのテーマとしながら、これまでの蓄積を活かし、住血吸虫など重要な寄生虫疾患を対象に研究を進める。マラリアについては、宿主細胞感染機構を、特に宿主と寄生体の相互作用に着目して解明するために、ネズミマラリア原虫、ヒトの熱帯熱マラリア原虫を用い、逆遺伝学的およびライブイメージング等の手法を活用して研究を進める。これに加え、薬剤耐性獲得のメカニズムや、新規ワクチン開発なども実施する。一方、住血吸虫症ではsmall RNAを内包する細胞外小胞による寄生虫間情報伝達機構について研究を進めている。また、ガーナやラオスなどの感染流行地におけるフィールド研究を実施し、寄生虫疾患の新規診断ツールやワクチン開発への展開も目指している。
このページの先頭へ▲

研究活動

(1) マラリア原虫の宿主細胞感染機構の解明:
マラリア原虫はその生活環の中で、様々に異なる細胞に効率よく侵入・感染する。特に、蚊からヒトへのマラリア伝搬を担うスポロゾイトが肝細胞に到達、感染する機構の解明に力を注ぐ。これまでに、マラリア原虫の遺伝子改変技術により、スポロゾイト感染に関わる原虫の分泌型タンパク質を複数同定し、その機序の一部を解明し報告してきた。今後は、これらのタンパク質と相互作用する宿主細胞側分子の同定を通じて、宿主ー寄生体の相互作用の観点から感染機構を包括的に理解したいと考える。同様の手法で、赤血球の感染機構や蚊の体内での原虫の有性生殖などのメカニズムの解明へと繋げる。得られた基礎的な知見を元に、感染流行地や他分野の研究者と共同で、感染阻止法などの開発への展開を目指している。

(2) マラリア原虫の薬剤耐性機構に関する研究:
マラリアの薬物治療はアルテミシニンを主薬剤として作用機序・半減期が異なるパートナードラッグを組み合わせた併用療法(Artemisinin combination therapy)が第一選択となっている。しかし、マラリア流行地ではアルテミシニンやパートナードラッグに対する耐性原虫が蔓延しており、マラリア根絶に向けて大きな障害になっている。私達は、次世代シーケンサーを用いて、流行地で得られた臨床分離株の全ゲノム解析や遺伝子発現解析を行い、薬剤耐性遺伝子を探索してきた。さらにゲノム編集技術を活用し、それらの薬剤耐性遺伝子の機能解析を行い、薬剤耐性機構の解明を目指している。得られた知見は、マラリア流行地における薬物治療戦略の開発に役立つことが期待される。

(3) 住血吸虫の細胞外小胞を通した産卵誘導機構の解明:
雌雄異体である吸虫類の住血吸虫は血管内で雌雄が抱合することで、産卵を行う。この雌雄での生殖のための情報交換として細胞外小胞に着目し研究を行っている。細胞外小胞の分泌阻害剤であるカルパインインヒビター(calpeptin)で処理した虫体では細胞外小胞の分泌とともに、産卵数の減少が見られた。このことから、現在、カルパイン遺伝子ファミリーのRNAiによるノックダウンを行い、細胞外小胞の分泌と産卵誘導におけるカルパインの機能を解析している。

(4) ガーナ拠点の研究支援:
東京医科歯科大学のガーナ・野口記念医学研究所拠点活動の一員として、マラリアを中心とした寄生虫研究を実施する。ガーナでは全人口の1/6に相当する約500万人もの人々が、毎年マラリアに感染する。社会的に大きなインパクトを与える問題に取り組むために、特に蚊に媒介されるステージの原虫に着目し、基礎研究で得られた知見をベースに応用展開を目指す。また、流行地でしか得られない知見・経験を、基礎研究および医学生の教育へと還元する。野口研の若手研究者を博士課程の学生として受け入れ共に研究を行う事で、継続的な連携に向けて尽力している。

このページの先頭へ▲

教育活動

日本における寄生虫感染症例は、地域、学校、職場などによる検査の実施、および薬剤投与など、さまざまな努力によって戦後大きく減少した。一方で、近年の社会環境の劇的な変化、ペットブーム、食習慣の変化、冷蔵技術の進歩などに伴って、国内で認められる寄生虫疾患の種類や発生動向が大きく変化してきた。それに加えて、物流および人間の出入国の増加に伴い、寄生虫症が流行する地域からの輸入症例の増加がわが国の安全・安心に重大な影響をもたらすようになった。2019年末から始まった、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを例に挙げるまでもなく、医療者にとって感染症の知識、対応を常に最新のものにし、さらに新興感染症に備えることは極めて重要である。さらに21世紀になってクローズアップされてきた「顧みられない熱帯感染症;Neglected Tropical Diseases」の大半が寄生虫病である事実は、寄生虫病が国際的に取り組むべき課題であることを顕著に示している。本分野では、世界の様々な地域における健康と福祉を理解し、思考し議論できる人材育成を進めるために、以下の事項を中心に教育している。医学部医学科の医動物学、社会医学、感染症学の他に、保健学科、歯学科においても講義を担当する。また、医学科のプロジェクトセメスターにおいては、基礎研究の考え方を指導するとともに、ガーナ派遣学生の指導も担当している。これらの教育を通じて、これからの保健医療分野で国際的に指導的立場に立てる人材の育成を目指している。

1.日本国内における寄生虫病の実態と診断・治療など
2.世界の寄生虫感染症流行の実態と予防対策
3.寄生体の宿主への感染機構、さらに生活環の生物学的理解
4.熱帯感染症の基礎知識と国際保健の取り組み
5.顧みられない熱帯病の現状と国際社会による対策
このページの先頭へ▲

教育方針

寄生虫および寄生虫感染症、衛生動物学の知識を系統的に教授する。その際に、それぞれの寄生虫症の発見や克服の歴史を紹介することで、今後の新興・再興感染症への対応ができる素地を育成する。実際の寄生虫標本を自ら観察することで、自発的に生物学的視点からの寄生虫の理解を促進するとともに、各疾患と診断法をリンクさせて定着を図る。実習を通じて、課題を自ら拾いだして問題解決にあたる能力を涵養することを目指している。座学だけにとどまらず、実習や野外調査になるべく多く参加させて、リアリティをもった課題設定とその解決能力の涵養を心がけている。
このページの先頭へ▲

臨床活動および学外活動

学内外の医療機関と連携し、寄生虫症診断のアドバイスを積極的に実施している。関東のみならず日本中から問い合わせを頂き、正しい診断に貢献する。
寄生虫感染症を対象とした診断法、治療薬やワクチン開発を目指した研究を実施している。また、国際共同研究として、流行地の調査研究に参加し、疾病コントロールや、ワクチン効果の評価、あるいは薬剤耐性の獲得メカニズムの解明などを通じて、感染流行地への貢献を目指した研究を行っている。
このページの先頭へ▲