概要 研究活動 教育活動 臨床活動および学外活動 臨床上の特色
ホームページ http://www.tmd.ac.jp/dent/endo/endo-J.htm

スタッフ

職名 氏名(カナ) 研究者情報
教授 興地 隆史(オキヂ タカシ)
准教授 砂川 光宏(スナカワ ミツヒロ)
講師 川島 伸之(カワシマ ノブユキ)
講師 金子 友厚(カネコ トモアツ)
助教 海老原 新(エビハラ アラタ)
助教 橋本 健太郎(ハシモト ケンタロウ)
助教 渡邉 聡(ワタナベ サトシ)
大学院生 木村 俊介(キムラ シュンスケ)
大学院生 倉本 将司(クラモト マサシ)
大学院生 高野 晃(コウノ アキラ)
大学院生 笠原 由伎(カサハラ ユキ)
大学院生 SU YEE MYO ZAW(スー イー ミョー ゾー)
大学院生 PYAE HEIN HTUN(ピー ヘイン トゥン)
大学院生 YADANAR SU PHYO(ヤダナー スー ピョー)
大学院生 AO XIANG(オウ シャン)
大学院生 村野 浩気(ムラノ ヒロキ)
大学院生 SALEH SHERIF ADEL ABDELFATTAH(ソレ シェリフ アデル アビドエルファッタホ)
大学院生 NYEIN PYAE SONE AUNG(ニェイン ピ ソーン アウン)
大学院生 ZAR CHI THEIN ZAW(ザ チ テイン ゾー)
大学院生 HTOO SHWE SIN THEIN(トゥ シュエ シン テイン)
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概要

 歯髄生物学分野は,歯髄および根尖歯周組織の疾患の予防,診断ならびに治療を考究する歯内療法学を専攻する分野である.歯髄は周囲を硬組織に囲まれた特殊な環境下に置かれている.歯を保存し,口腔内で十分に機能させるためには,歯髄の構造的・機能的特徴をよく理解し,歯髄の保護に努める必要がある.他方,歯髄疾患を放置すれば,やがて歯髄死を招き根尖歯周組織疾患を生ずるに至るが、その治療に際しては,複雑な根管系における細菌感染の入念な排除が必要となる。歯内療法学は,歯髄疾患や根尖性歯周疾患の予防や治療により,歯を保存し永くその機能を営ませることを目的としている.
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研究活動

研究活動
1. 象牙質/歯髄複合体のバイオロジーと歯髄組織の再生
1-1間葉系幹細胞を用いたラット歯髄組織の再生
・間葉系幹細胞とスキャホールドを,冠部歯髄を除去したラット上顎臼歯に移植する手法を用いたラット歯冠歯髄再生モデルにおけるマクロファージ亜群の挙動を,CCR7 (M1マクロファージマーカー) ,CD163 (M2マクロファージマーカー)あるいはCD206 (M2マクロファージマーカー)の発現を指標として免疫組織化学的に解析したところ,スキャホールドの吸収と歯髄組織再生の進行に伴い,マクロファージ亜群の構成がM1優位からM2優位に移行した.さらに,CD163 mRNAおよびCD206 mRNAの発現レベルも経時的に増加を示した.
・上述のラット歯冠歯髄再生モデルにおいて,神経線維の再構築/再生過程を,免疫組織学的および分子生物学的に検索したところ,nerve growth factorおよびgrowth-associated protein 43遺伝子の増加とともに,substance Pおよびcalcitonin gene-related peptide陽性神経線維の再構築および再生が生じることがわかった.
・間葉系幹細胞の一種であるヒト脱落乳歯幹細胞とヒト血管内皮細胞間のクロストークを,共培養を用いたin vitroにおいて,マイクロアレイによる網羅的およびリアルタイムPCRによる統計学的解析を実施したところnuclear factor kappa Bのシグナル伝達経路を介してBCl-2など血管新生関連遺伝子発現の上昇が生じていることが確認された.
1-2ヒト歯髄未分化間葉細胞の特性に対する培養条件の影響
 ヒト歯髄幹細胞を再生医療に使用する場合,歯髄組織より採取できる歯髄幹細胞数には限界があり,in vitroで培養し細胞数を必要量まで増やす必要があるが,培養の過程で幹細胞特性が喪失する可能性が懸念される.今回ヒト歯髄幹細胞を高密度で4日間培養したところ,低密度培養と比較して間葉系マーカー発現が低下し,細胞増殖活性が低下したが,神経,脂肪等への多分化能には影響を認めなかった.一方,骨への分化傾向は亢進し,マウス頭蓋冠骨窩洞に移植することで骨様の硬組織を形成した.以上の結果より,ヒト歯髄幹細胞の間葉系幹細胞としての特性は,限られた期間であれば高密度培養の影響を受けづらいことが明らかになった.また,高密度で培養したヒト歯髄幹細胞は硬組織形成細胞への分化が誘導されることも確認された.
1-3歯髄細胞におけるTRPチャネル発現および機能に関する研究
 ヒト歯髄幹細胞(hDPSCs)にはTRPA1が発現しているが,LPS刺激によってTRPA1チャネルの発現が増加することを明らかにした.深在性う蝕を有する歯髄においても,う蝕直下象牙芽細胞におけるTRPA1チャネル発現が亢進していることを免疫組織化学染色にて確認した.LPS刺激によりNOが生じるが,hDPSCsにNO刺激を単独で加えてもTRPA1発現が増加することより,NO刺激がTRPA1発現に直接関与していることが示唆された.

2. 実験的歯髄炎誘発後のラット視床における疼痛関連遺伝子発現の変動
 視床は末梢からの感覚情報の処理に関与するが,歯髄に侵害刺激が生じた際に,視床の遺伝子発現にどのような変化が生じるかについては不明な点が多い.歯髄神経を興奮させるために細神経興奮性物質かつ起炎性物質であるmustard oil (allyl-isothiocyanate : MO)をラット臼歯歯髄に適用し,化学的に実験的歯髄炎を誘発させた際に,視床において発現の変化する疼痛関連遺伝子を検索した.その結果,MO刺激による実験的歯髄炎誘発ラットモデルにおいて,電位依存性カリウムイオンチャネルのサブタイプであるpotassium voltage-gated channel subfamily A member 1(KCNA1)の mRNAの発現低下が生じた.

3. 透過光光電脈波法(TLP)を用いたヒト歯髄生活性検査の開発
 歯髄生活性を臨床的に計測できる客観的方法の開発を目的とし,成人ボランティアを被験者として,永久前歯を用いて平常時および歯への寒冷刺激を加えた際のTLP信号を記録した.その結果,疼痛閾値以下の寒冷刺激でTLP振幅の減少が生じることを明らかにした.

4. 歯髄炎の発症および進展に関与する因子とその制御
4-1歯髄炎におけるmicroRNAの役割と炎症制御
 近年,各種microRNAが様々な生体反応において重要な役割を担っていると報告されている.そこで,microRNAの一つであるmiR-21に着目し,その歯髄炎発症・治癒過程への関与の可能性を検討した.その結果,LPS刺激したヒト歯髄細胞においてmiR-21の発現増加を確認するとともに,miR-21がTRAF6,PDCD4の発現抑制を介してNFkBシグナルを抑制し,LPS刺激ヒト歯髄細胞からの炎症性メディエーター産生を制御することを見出した.また,miR-21がTRAF6の3’UTRに結合することも確認した.以上より,miR-21が歯髄における炎症制御におけるモデュレーターとして機能している可能性が示唆された.
4-2歯髄炎におけるhypoxia inducible factor 1α (HIF1α)の関与
 周囲を硬組織で囲まれている歯髄は,容易に低酸素状態に陥りやすい.そこで,低酸素状態の組織・細胞において発現・機能するHIF1αに着目し,歯髄における炎症調節にHIF1αがいかなるメカニズムで関与するかを解析した.その結果,LPSで刺激したヒト歯髄細胞において,HIF1α産生がNFkBシグナルを介して誘導されることを見出すとともに,HIF1αがIL1β,TNFα mRNA発現を正の方向に,またIL6 mRNA発現を負の方向に制御することを明らかにした.低酸素状態の亢進は,通常酸素状態とは異なる炎症様態を呈することが明らかになった.

5. 歯科用レーザーを用いた根管洗浄の安全性および清掃性に関する検討
 歯内療法における新たな根管洗浄法として,歯科用Er:YAGレーザー照射装置を用いたLAI (laser-activated irrigation) が考案され,その臨床応用が期待されているものの,LAIでのキャビテーション挙動や,根尖孔外への溢出リスクや,複雑な根管形態への洗浄効果を測定に関する報告はほとんどみられない.現在のところ,LAIは照射チップ先端から距離が離れている模擬根管側枝内の水酸化カルシウム除去効率において他の洗浄方法よりも高かった.さらに照射条件が,根管内蒸気泡の挙動および根尖孔外に生じる圧力への影響を解析したところ,蒸気泡数と最大径は,照射エネルギー,繰り返しパルス数,チップ径増加により有意に増加した.蒸気泡速度は繰り返しパルス数の増加に伴い上昇したが,照射エネルギーとチップ径による有意差を認めなかった.根尖孔外に生じた圧力は,上記全ての照射条件の増加で有意に増加した.またレッジを有する根管形態に対するLAIの挙動を評価したところ,レッジを越えた根尖部においても洗浄効果を認め,超音波と比較して有意に高い洗浄液の活性化挙動を示していた.

6. 直接覆髄材・根管充填用シーラーの新たな展開
6-1 Mineral trioxide aggregate (MTA)による炎症制御の可能性
 直接覆髄において使用されるMTAは,硬組織誘導能が高いことで広く臨床において使用されている.しかし,MTAの炎症に対する作用については十分に解析されてはいない.MTA抽出液で処理することで,LPS刺激されたマクロファージからの炎症性メディエーター産生が抑制されることを明らかにした.細胞内に取り込まれたカルシウムイオンがcalcineurin-NFATシグナルを活性化し,その結果発現する種々の転写調節因子が,炎症性メディエーター産生の抑制に関与しているものと思われる.
6-2 S-PRGシーラーの硬組織形成細胞への影響
 Surface reaction type pre-reacted glassionomer (S-PRG) フィラーは,フッ素イオン(F-),ホウ酸イオン(BO3 3 -),ストロンチウムイオン(Sr2+),ケイ酸イオン(SiO3 2-)などのイオン放出能を示す.S-PRGフィラーが添加された試作根管充填用シーラーは,ERKのリン酸化を亢進し,骨芽細胞の石灰化を誘導している可能性が示唆された.さらに,S-PRGシーラーは抗炎症作用も有していることを明らかにした.
6-3新規合成ケイ酸カルシウム製材の開発
 合成ケイ酸カルシウム製材がMTAに替わる次世代の歯内療法用材料として注目されている.本研究では合成ケイ酸三カルシウムにストロンチウムアルミネートを添加し,物性やエックス線造影性への影響を解析した.その結果,硬化時間の延長が生じたものの,エックス線造影性の向上が図られることが明らかとなった.
6-4 熱によるケイ酸カルシウム系シーラーの理工学的特性への影響
 ケイ酸カルシウム系シーラーは,生体親和性があり収縮しないといった優れた性質を持つが,加熱ガッタパーチャ法への適否は見解の一致をみない.そこで,熱がケイ酸カルシウム系シーラーの物性に及ぼす影響を検討したところ,硬化時間の促進,フローの減少,被膜厚さの増加が認められた.ケイ酸カルシウム系シーラーを加熱ガッタパーチャ充填法に用いた場合,シーラーの物性にマイナスの影響が生じると考えられた.

7. ニッケルチタン(NiTi)ロータリーファイルを用いた安全で効率的な根管形成
7-1 NiTiロータリーファイルの金属工学的解析
・WaveOneGold (WOG),WaveOne (WO) およびReciproc (RE) を回転疲労試験,曲げ試験,根管形成時応力解析試験にて評価した.回転疲労試験において破折までの時間がWOGはWOと比較して有意に長かった.曲げ試験では,WOGがWOおよびREと比較して有意に曲げ荷重が小さかった.根管形成時の応力は,WOGはREと比べて,トルクが小さく,歯冠側方向の垂直応力 (screw-in-force)が小さかった.
・Reciproc Blueの根管形成能と形成中の応力をReciprocと比較検討を行った.Reciproc BlueはReciprocと比較して有意に優れた根管形成能を示した.根管形成中のトルクに関しては有意差を認めなかったが,screw-in-forceはReciproc Blueが有意に小さい値となった.
7-2 各種根管形成法における根管形成能の比較 学生による形成に対する評価
 NiTiファイルの使用経験の無い歯学部学生が,EndoWaveを用いたシングルレングス (SL) 法もしくはクラウンダウン (CD) 法,あるいはKファイルを用いたステップバック (SB) 法にて根管形成を行った際の,切削量や作業時間を解析した.根尖0 mmの位置でのSB群の切削量は他2群と比較して有意に大きい値となった.また作業時間はSB群が他2群と比較して有意に延長した.SL群とCD群間に,切削量および作業時間について有意差は認めなかった.
7-3 ニッケルチタンファイルの上下動速度が根管形成能に与える影響
 自作型自動根管形成応力解析装置およびProTaper NEXTを用いて,異なる上下動速度でJ字型根管模型に対して根管形成を行い,根尖から0 mm, 3 mmの位置での切削量を計測した.0 mm外湾の切削量は,高速群 (100 mm/min),中速群 (50 mm/min),低速群 (10 mm/min) の順に低値となった.高速群はねじれ疲労,低速群は回転疲労が蓄積しやすいことが推察された.
7-4 グライドパス用NiTiファイルの検討   
 手用器具および,連続回転,Optimum glide pathモーションで使用するニッケルチタン製ロータリーファイルによるグライドパス形成の,応力解析および根管追従性の比較
HyFlex EDM Glide Path Fileを用いたグライドパス形成の応力解析および根管の体積変化を手用ステンレススチール製Kファイルでの形成と比較をした.
7-5異なる形成方法を用いた根管形成時のトルクと垂直荷重の発生に対するOptimum Torque Reverse 動作の影響
 自作型自動根管形成応力測定装置およびEndowaveを用いて,異なる回転運動およびそれに伴う上下動運動,さらに異なる形成方法 (クラウンダウン法およびシングルレングス法) の組み合わせで直線根管模型に対して根管形成を行い,生じたトルクおよび垂直荷重を測定した.シングルレングス法において,トルク依存型往復回転を行うOptimum Torque Reverse 動作は連続回転の場合と比較して,トルク,荷重は低値を示し,安全に根管形成が行える可能性が示唆された.

8. 歯科用コーンビームCT(CBCT)・光干渉断層画像診断法(OCT)による精度の高い診査・診断
8-1 CBCTを用いた根尖部骨欠損の評価と歯根破折診断に関する研究
 垂直性歯根破折 (VRF) は歯の喪失の主な原因の一つであるが,その診断は困難である.本研究では,瘻孔の有無や位置がVRFの診断項目として有用であるかを後ろ向き調査で解析した.根尖周囲外科手術を施行し,慢性根尖性歯周炎もしくはVRFと診断された症例を対象とし,術前CBCT画像および術中動画を用いて,瘻孔の有無・位置や骨欠損形態とVRFとの関連を検討した.その結果,瘻孔の有無はVRFの存在と関係性はないが,瘻孔の位置や骨欠損の位置とVRFの存在には有意な関連があり,歯頚部付近に瘻孔がある場合VRFの可能性が高いことが示唆された.
8-2 OCTの歯内治療領域への応用に関する研究
 OCTは,近赤外光と光学干渉計を用いた非侵襲的に組織の精密断層像を得ることが可能な医療撮像用の新技術である.現在までに抜去歯を用いた歯根破折線の検出や象牙質内部の歯髄腔や根管の探索に有用である可能性が示されている.そこで本年度は歯根尖切除,超音波装置による逆根管窩洞形成,および逆根管充填時に発生・伸展する亀裂に対するOCTの検出能を,ヒト抜去下顎切歯を用いて評価した.その結果,デジタルマイクロスコープ(DM)で歯根尖切除後47%,逆根管窩洞形成後87%に亀裂を認めたが,OCTとDMの相関は弱く,またOCTはDMより感度が低いことが示された.象牙質の亀裂の検出にはOCTの有効性は十分とは言えず,今後の研究が必要と思われる.
8-3 歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いた日本人の根管形態評価
 根管治療においては,細菌感染除去を複雑な根管形態の中で達成しなければならないため,根管形態のバリエーションを十分に把握することが肝要であるものの,日本人の根管形態の大規模調査はほとんどない.本学歯学部附属病院でCBCT(Fine Cube®, ヨシダ)にて撮影された患者623名の画像を用いて,上下顎小臼歯および大臼歯の未根管治療歯を対象に,歯根・根管数,歯根長および根管分岐部の位置をそれぞれ記録した.本研究で得られた根管数のデータは根管探索時の指標として有用と考えられた.
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教育活動

 当分野では,歯内療法領域をリードする研究者、臨床医の育成を教育目標としている.近年における歯髄生物学や歯内療法学の進展は目覚ましいことから,その最先端の内容を教授するのみならず,神経生理学,分子生物学,免疫学,生体材料学,画像診断学などの関連領域の知識,さらには最新の治療技法の修得に関する教育も行っている.独自の研究に基づき歯内療法領域における新知見を得ることが大学院の修了要件となる.
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臨床活動および学外活動

歯髄生物学分野は,本学歯学部附属病院においてう蝕制御学分野と共にむし歯外来を担当しており,グローバルスタンダードな歯内療法を提供することを目的として診療にあたっている.以下にその代表的な処置内容を挙げる.
・生活歯髄の処置(覆髄法,象牙質知覚過敏症処置)
・非外科的歯内療法
・再根管治療
・マイクロサージェリー
・無髄歯の漂白
・歯内療法後の歯の修復
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臨床上の特色

歯内療法は近年大きく変化しており,Ni-Tiロータリーファイルによる根管形成,歯科用コーンビームCTによる診断,手術用実体顕微鏡下の非外科的・外科的歯内療法(microendodontics)などの導入が図られている.特にmicroendodonticsは,明るい拡大視野下で確実な診断や精密な施術を行うことを可能とするため,今までの「手探りで行ってきた」歯内療法をより確実な歯内療法へと劇的に変化させている.また,本分野における基礎的実験や臨床的研究に基づき,科学的根拠に立脚した歯内療法の提供に努めている.
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