概要 研究活動 教育活動
ホームページ http://www.tmd.ac.jp/mri/bre/index.html

スタッフ

職名 氏名(カナ) 研究者情報
教授 樗木 俊聡(オオテキ トシアキ)
講師 佐藤 卓(サトウ タク)
助教 金山 剛士(カナヤマ マサシ)
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概要

 当分野では、「生体の防御と恒常性維持の理解」に焦点をあて、それらを担う免疫細胞や組織幹細胞の分化・機能を、正常および疾患病態において理解することを目的としている。樹状細胞・マクロファージなどのミエロイド系細胞や、血液・腸・皮膚の組織幹細胞を研究対象として、免疫系、組織幹細胞系、さらにはそれら異系間相互作用による恒常性維持とその破綻による病態構築機序の解明に取り組んでいる。また、それら成果に基づき、難治性疾患の予防法・治療法の開発へ繋がる応用研究への糸口が得られるよう研究を推進している。
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研究活動

1.単核球系貪食細胞の研究
1)単核球系貪食細胞の源となる細胞の発見
  1968年、Ralph van Furth, Zanvil A. Cohnにより、単球とマクロファージをまとめて単核球系貪食細胞(Mononuclear Phagocyte)と呼ぶことが提唱された。1973年、Ralph M. Steinman, Zanvil A. Cohnによって樹状細胞(Dendritic Cell, DC)が同定されたことに伴い、DCも単核球系貪食細胞に分類され現在に至っている。今日、マクロファージの機能は異物排除や感染防御といった古典的免疫学の枠を超え、組織形成・再生などの組織恒常性維持、さらにはがん組織形成やさまざまな炎症性疾患病態構築への積極的関与を含め、広範な生命現象に及ぶことが明らかになりつつある。一方、DCは、感染など緊急時における免疫応答の発動のみならず、免疫寛容の誘導維持に必要不可欠な細胞とされている。
  DCは、抗原提示能に優れた従来型樹状細胞(cDC)と、ウィルスや自己の核酸に応答して大量のインターフェロンを産生する形質細胞様樹状細胞(pDC)に分類される。私たちの研究グループは、DCだけを大量に産みだす“DC前駆細胞”をマウスで同定し、共通DC前駆細胞(Common DC Progenitor, CDP)として報告した(Immunity 2013; Nat Immunol 2007)。CDPは、M-CSF受容体(M-CSFR)発現の有無を指標に2種類に分類される。M-CSFR+CDPは主にcDCを生み出すが、M-CSFR-CDPはpDCへの分化能に優れていた。その後、単球・マクロファージ前駆細胞として共通単球前駆細胞(Common Monocyte Progenitor, cMoP)もマウスにおいて同定されたが、ヒトcMoPは未同定であった。
 私たちの研究グループは、数年来、ヒト単核球貪食細胞前駆細胞の同定も試みてきたが、最近、ヒト臍帯血や骨髄を用いてcMoPの同定に成功した(Immunity 2017; Int Immunol 2018, 特許申請済)。ヒトcMoPは、従来のヒト顆粒球・単球前駆細胞(GMP)分画の中に混在しており、優れた単球・マクロファージへの分化能を示す一方、他の血液細胞へは分化しなかった。ヒトcMoPは、単球を経て、炎症惹起性マクロファージ、破骨細胞、腫瘍随伴マクロファージ(Tumor Associated Macrophage, TAM)などに分化するため、ヒトcMoPを標的とした新規治療法の開発が期待される。現在、本学血液内科、小児科、膠原病・リウマチ内科との共同研究を行なっている。

2)炎症性腸疾患における単核球系貪食細胞の役割
  腸管上皮バリアー機能の破綻は、腸内常在菌の生体内への侵入を介して不適切な免疫応答を惹起し、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease, IBD)の誘因になる。私たちの研究グループは、薬剤誘導性IBDモデルを用いて、腸内常在性グラム陽性菌が、炎症性単球・マクロファージの大腸組織への動員に重要なことを明らかにした(Mucosal Immunol 2015)。炎症性サイトカインTNF-αは代表的なIBD増悪因子かつ治療標的の1つであるが、その主たる産生細胞は炎症性マクロファージであった。さらに当該大腸炎惹起性マクロファージを詳細に解析したところ、Ly6C+マクロファージがTNF-αを高産生する大腸炎惹起性マクロファージの主体であった。さらにLy6C+マクロファージの分化にはIFN-γ→STAT1経路が必須であり、IFN-γを介したヒストンのアセチル化が、TNF-αを高産生するLy6C+大腸炎惹起性マクロファージの誘導に重要であった。アセチル化阻害剤をマクロファージに選択的に投与することがIBD治療戦略として期待される(Mucosal Immunol 2018)。

2. 組織幹細胞の研究
1) 免疫系—組織幹細胞系の連関による組織恒常性の維持と破綻
  私たちの研究グループはこれまで、何ら感染の起きていない生体において、生理レベルのI型インターフェロン(IFN)シグナルが造血幹細胞(Hematopoietic Stem Cell, HSC)ストレスとして働き、同細胞の幹細胞性低下の原因になることを報告した(Nat Med 2009)。また、I型IFNのHSCへの作用を活かして、放射線による移植前処置を行わず、I型IFN誘導剤を用いてHSCを移植することに成功し、これを先天性代謝疾患ムコ多糖症モデルの治療に応用し一定の治療効果を得ることに成功した(Blood 2013)。
 これらの成果に基づき、I型IFNを含むサイトカインシグナルの他の組織幹細胞への影響を検討している。現在までに、IFNシグナルが全身性あるいは組織特異的に過剰に入るマウス、あるいはI型IFN誘導剤をWTマウスに投与・塗布して、腸上皮再生の源である腸上皮幹細胞(Intestinal Stem Cell, ISC)及び毛や表皮再生の源である毛包幹細胞の幹細胞性が低下することを見出しており、詳細な分子基盤を追求中である。

2)ヒト舌癌オルガノイドバイオバンクの構築と治療法開発
 口腔癌は世界で年間27万人が新たに罹患しており、増加傾向にある。そのうち2/3が舌癌であり、進展した症例では治療抵抗性となり予後不良な疾患で、原因遺伝子も同定されていない。これらの背景下、我々はヒト舌癌オルガノイド培養系の確立に成功した。今後は、ヒト舌癌オルガノイドバンクを構築し個別化治療に繋がる基盤技術開発を目指している。
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教育活動

 医学部医学科免疫学講義、生命情報科学教育部修士課程講義、大学院医歯学総合研究科博士課程生体防御学特論、演習、実習、さらに他大学非常勤講師として大学院セミナーを担当している。また大学院博士課程の学生に免疫学、組織幹細胞学の教育研究指導を行っている。
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