概要 研究活動 教育活動 教育方針
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スタッフ

職名 氏名(カナ) 研究者情報
教授 田中 光一(タナカ コウイチ)
助教 石田 紗恵子(イシダ サエコ)
助教 平岡 優一(ヒラオカ ユウイチ)
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概要

種々の分子や細胞の機能及びこれらの異常がどのように動物の個体レベルでの行動及び行動異常に関与するかについて遺伝子改変動物を用いて研究する。これらの解析を通して、記憶・学習などの脳高次機能及び機能異常の機構を、分子・ 細胞および個体レベルで理解する。
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研究活動

1.グルタミン酸トランスポーターの脳機能における役割
中枢神経系の興奮性シナプス伝達は主にグルタミン酸により担われており、グルタミン酸シグナル伝達の解明は脳機能解明の基礎となる。我々の分野では、神経回路網の形成・脳高次機能におけるグルタミン酸シグナリングの機能的役割を分子、細胞、個体レベルで明らかにすることを目指す。また、過剰なグルタミン酸は神経毒性を示し、様々な精神神経疾患の原因と考えられている。精神神経疾患におけるグルタミン酸シグナル伝達の病態生理学的役割を解明し、それら疾患の新しい治療法の開発を目指す。グルタミン酸シグナル伝達に中心的な役割を果たすグルタミン酸トランスポーターを中心に研究を行っている。
グルタミン酸トランスポーターは、神経終末から放出されたグルタミン酸を取り込み、神経伝達物質としての作用を終わらせ、細胞外グルタミン酸濃度を低く保つ機能的分子である。現在まで脳のグルタミン酸トランスポーターには、グリア型2種類(GLT1, GLAST)と神経型2種類(EAAC1, EAAT4)の計4種類のサブタイプが知られている。グリア型グルタミン酸輸送体の機能障害は、多くの精神神経疾患(筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、脳梗塞・脳外傷、てんかん、統合失調症、うつ病、自閉症など)で報告されており、神経細胞の機能障害および変性・脱落に関与する共通した機序だと考えられています。
本年度は、GLT1の異常が起こる部位により、異なるてんかん発作が起こることを明らかにしました。脳幹特異的GLT1欠損マウスは、思春期以降に全身性強直性痙攣*を伴うてんかん発作を起こし、突然死を示した。一方、大脳皮質特異的GLT1欠損マウスは、小児期に一過性にミオクロニー発作やスパスム発作を示すが、突然死を示すことはなかった。しかし、大脳皮質特異的GLT1欠損マウスは、てんかん発作により大脳皮質の一部に神経細胞の脱落が観察された(Sugimoto et al., 2018)。
また、GLT1を異なる脳部位から欠損させた2種類のマウス(脊髄特異的GLT1欠損マウスと中脳特異的GLT1欠損マウス)を作成し、慢性疼痛に及ぼす影響を検討しました。通常のマウスでは、末梢神経を傷つけると痛覚過敏の症状を示します(神経因性疼痛モデル)。脊髄特異的GLT1欠損マウスでは、神経因性疼痛の症状が悪化しました。しかし、中脳特異的GLT1欠損マウスでは、神経因性疼痛の症状が起こりませんでした(Zhao et al., 2018)。以前の研究で、末梢神経を傷つけると、GLT1の発現は脊髄で減少し、中脳で増加することが報告されています。今回の研究結果は、このようなGLT1の発現変化が慢性疼痛の発症に関与していることを示唆しています。

2.ゲノム編集ツールの開発 (LoAD法の開発)
Microhomology-mediated end-joining repairを促進する因子Ctipを見つけ、CtipをDNA修復部位に集積させる方法 (Local accumulation of double strand break (DSB) repair molecules; LoAD法)を開発し、複数領域への同時遺伝子挿入の効率化を実現した (Nakade et al., 2018)。

3.DEPDC5のてんかんおよび精神疾患発症における役割の解明
「てんかん」は、人口の約1%に生じる頻度の高い神経疾患であり、神経細胞の過度な放電に由来する反復性発作を特徴とし、多種多様な臨床症状を示す。多くの場合は根本的な治療法がなく、抗てんかん薬を長期間服用する対症療法に頼らざるを得ない。また、全体の約30%は抗てんかん薬が効かない難治性である。
近年、腫瘍などの病変が認められない「特発性てんかん」の病因として特定の遺伝子の変異が報告されている。これまでイオンチャネル関連遺伝子、もしくは伝達物質受容体のサブユニット遺伝子の変異が報告されてきたが、多種多様である「てんかん」の症状は、現在報告されている遺伝子の機能解析だけでは十分に解明できていない。DEP (Dishevelled, Egl-10 and Pleckstrin) domain containing protein 5 (DEPDC5)(Ishida et al., 2013)遺伝子はこれまでに報告されてきたてんかん原因遺伝子とは相同性がなく、その発症機序は、既知のものとは異なることが推測されている。ゆえに、DEPDC5機能解析研究は、新たなてんかん予防法や治療法の開発につながることが期待される。さらに、患者において自閉症スペクトラム(ASD)等の精神疾患の併発が多く認められ、精神疾患のみを示す患者も認められたことから、DEPDC5はてんかんのみならず、精神疾患の病因でもあることが指摘されている(Scheffer, Neuropediatrics, 2014)。しかしながら、DEPDC5の生体内における機能や、DEPDC5機能障害による発症機序は未だ明らかになっていない。
我々はこれまでに、DEPDC5のノックアウトラットおよびマウスは、胎生致死を示し(Marsan and Ishida et al., 2016)、また、Zebra fish におけるKnockdownは、過活動を引き起こすことを明らかにした(de Calbiac et al., 2018)。加えて、ヒト患者と同じ遺伝子型であるDEPDC5ヘテロ型ノックアウトマウスは複数の行動異常を示すことを明らかにした。今後の発症メカニズムの解明は、てんかんおよび精神疾患研究に新たな知見を与える。


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教育活動

研究実習
認知のメカニズムを分子から個体行動レベルまで統一的に解析するため、遺伝子改変動物、キメラ動物の作成を行う。また、作成したモデル動物の認知異常の解析およびその異常が発生した分子メカニズムに関して解析してもらう。

参加可能プログラム
研究グループへの参加  随 時
細胞生物学実験      年5回 13:00-16:00
実験内容
 1.遺伝子の単離とターゲティングベクターなどの作成
 2.遺伝子改変マウスの作成
 3.動物の行動解析法
 4.中枢神経系の形態学的解析法
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教育方針

認知のメカニズムを分子から個体行動レベルまで統一的に解析するため、遺伝子改変動物、キメラ動物の作成を行う。また、作成したモデル動物の認知異常の解析およびその異常が発生した分子メカニズムに関して解析してもらう。
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